橋本トモコ

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空間を描こうと考えている。
例えば、ここに1つの箱が在ったとする。
その中には何も無い。
よってその箱の中身は意識されることがない。
そこに1個のリンゴを入れてみる。
リンゴの周りに「リンゴが無い」空間が在ることに気が付く。
リンゴを入れることによって、その周りに「何も無い」と意識された空間が生まれるのだ。
これを平面上でやってみる。
対象物が描かれることで周りの空間は意識される。
こうして空間は描かれる。

植物を描く。この世の誰も変えることの出来ない自然の形。
その形は独立し、誰にも侵されること無く力を保有する。
その形を借り、より単純により強く画面に置く。
形は押し黙り、周りの空間は緊張する。
画面は沈黙する。力と緊張を持って。

最近の仕事として、対象物を切り取ることを始めている。
「何も無い」空間があるものと対象物を切り取った「何も無い」空間さえ無いものといった空間の対比を作ろうと考えている。
ふたつの二次元の空間が、現実的な三次元の空間に組み込まれることによって空間の重なりを生み出そうという試みである。

 
2003年6月
橋本トモコ展 コメント
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