橋本トモコ

Fine Art Worksbiographytextcontactlink
home

. .

 

 

橋本トモコ 白い光、落ちる闇

晴天であっても
グレー階調の成分が多く含まれた日本の風景。
雨や曇りの日の緑は、さらに深いグレーに支配される。
土留め色の川面に映り込んだ空の色は、
どこか重みをもった独特の碧色になる。
どんなに鮮やかで強い色合いでも、
そこには日本固有の色彩バランスがある。

この日本で生まれ育ってきた感性をベースに
重乗たる地道なペインティングによって切り出された
純日本的な、侘び寂びの空間。

様式は、西洋の流れをくむファインアート。
高度に結晶したハイブリッドな絵画のスタイル。

『橋本トモコ』にしかない、オリジナルな形式がある。

遠目にはまるで切り絵のように見えるが
近づけば、緻密な作業を重ねた刷け跡が見えてくる。
「実際に観なければわからない」
その絵に込められた、作家自身の強い確信のカタチ。

ギャラリーとは
このように極めてパーソナルな表現(芸術)が
社会と接する空間を提供する場所である。

千葉市民ギャラリー・いなげで行われている
「橋本トモコ 白い光、落ちる闇」
橋本の作品は、ギャラリー2階に展示されている。

そして、もうひとつ。
ギャラリーの建物の隣にも
ひとつ、橋本トモコの絵が置かれている。

千葉県には2ヵ所しかない
指定重要文化財となっている「旧神谷伝兵衛」稲毛別荘。
あの『神谷バー』オーナーで知られるワイン王が残した洋館の2階は
葡萄の木や葡萄模様の透かし彫りなどが内在しながらも、
見た目は純粋な和室であった。
その床の間に置かれた『橋本トモコ』のハイブリッドな絵画は、
過去の時間のなかに、「たった今」という現在が強い存在感を醸しつつ
根底に流れる純日本的なルーツによって、
室内に差し込む光とともに馴染んでいくような
時空を超えた響き合いを生んでいた。

 


福田 聡(グラフィックデザイナー, プランナー)
 橋本トモコ 白い光、落ちる闇
2014年1月

.
INDEX