橋本トモコ

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橋本トモコの作品は、透明な油絵具を丹念に塗り重ねる古典技法で描かれることで知られています。 テンペラ絵具と油絵具の混合技法をはじめとする、長年にわたる試行錯誤を通して到達したこの手法は、橋本が理想とする『美しいパネル、美しい絵具、美しい絵画表面と共に美しい空間の創造』を可能にするものでした。

橋本の画面には椿、朝顔、松の葉など、日本人には馴染み深いモチーフ、そしてバナナ、りんご、ストロベリーといった私たちの身近に存在するモチーフが登場してきます。そこには、ありふれたイメージを取り上げることでモチーフの無意味性を提示しようとする逆説的な狙いが隠されています。

橋本の描く、対象を極力簡略化したミニマルなイメージは、一見するとグラフィカルに描かれているようにも見受けられますが、実作を眼前にすると不思議にも静謐さとモチーフのリアルな存在感が伝わってきます。

入念かつ丁寧な作業行程に、その秘密があるのでしょう。多くの時間を費やす下地づくりはもとより、透明な油絵具を幾重にも塗り重ねてゆくプロセスは、色彩に一層の深みと複雑な艶感を与えます。まるで生命のリアルな息吹が吹き込まれているようです。たとえ他人が同じ手順で表現を試みたとしても到底まね出来ないこの息吹は、橋本の材料学に関する知識(=計算)と繊細で無駄のない輪郭に基づくデッサン力によって裏付けされたものです。

一枚のキャンバスで完結した作品に加えて、キャンバスと、そこから飛び出した複数のイメージによってダイナミックな空間構成を実践することもあります。その試みは『「何も無い」空間があるものと対象物を切り取った「何も無い」空間さえ無いものといった空間の対比』を目指したものだといいます。

今回の個展は、2008年以来のものとなります。”透明な土”との題は何やら自然界の万物流転をも予感させます。作品に登場する「花」や「葉」、「果物」、「水」などあらゆるモチーフがキーワードとなっている四大元素の「土」とどのようなかたちで関連し、呼応し合うのでしょうか。会場で作品と対峙した瞬間、万物の輪廻をも想起させる世界が幻出するかも知れません。26ピースで壁面を埋める大作はじめ合計4点の出品が予定されています。

※文中『』内は、橋本トモコの言葉です。

 
2012年
橋本トモコ - 透明な土- STORE FRONT  Press Release

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