橋本トモコ

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絵画・彫刻における現代性とは―小山利枝子、吉田直、橋本トモコ

 

 現代美術というジャンルなどそもそも存在しないのではないだろうか。抽象、ミニマル、コンセプチュアル、インスタレーションであれば現代美術であるなどという誤った風潮が以前にはあった。形骸化した現代美術風の作品などは新しくもオリジナリティーもない。肝要なのは制作へと内側から突き動かす「感情」に忠実であることである。その「感情」は古今東西の誰のものでもなく自分だけのものである筈だから、誰かの言語を借りることもできず、その「感情」を表現するための言語を探さなければならない。それが可能になったとき、その作品はまさに現代の美術であり、オリジナルなものとなる。それでは、今回推薦した小山利枝子、吉田直、橋本トモコの作品がどのようなものであるのか、簡単に触れてみることにしたい。
(中略)
 橋本トモコの作品は、一見すると最近はやりのスーパーフラットと勘違いされるかも知れない。彼女は誰もが一目で分かるモチーフを描く。彼女は何を描くかではなく、どのように描くかということに重きを置いている。布に白亜地の地塗りを施し、最下層にバーントシェンナ、補色などを経て、透明度の低い色彩から高い色彩を重ね、油絵具が本来持っている美しさと堅牢さを獲得する。古典技法を学んだ彼女は、如何にして絵画は成立するかという、基本的でありながら重要な問題を提起している。また彼女の描く輪郭線は洗練された美しさがあり、視覚体験としての作品の魅力があることは言うまでもないことである。

 

中村隆夫(多摩美術大学教授、美術評論家)
 2008CAFネビュラ展カタログ

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