橋本トモコ

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展覧会を終えて
 

 1994年から毎年、現代美術の普及と若手作家の活動支援を目的として船橋市民ギャラリーを会場に「ふなばし現代美術交流展」を開催してきた。12回目の本年は「物語が生まれる所」と題し20〜30代の女性アーティスト8名を取り上げた。女性アーティストだけの展覧会は「ふなばし現代美術交流展」では始めての試みであった。アーティストの選定では女性らしい表現、女性性、ジェンダーにかかわる表現をしている作家というより、さまざまな表現の側面を現在活躍しているアーティストから選び、その多様性を伝えるよう心がけた。結果、絵画を中心に、映像、インスタレーション、陶芸などさまざまな技法・素材を使う作家がそろった。タイトルの「物語が生まれる所」というのは展覧会が作家にとって船橋市という場所に出会って生まれてくる表現を伝える場所であり、そしてそれを見る人との間にも新しい物語が生まれる場所であって欲しいという思いをこめてつけたものである。
(中略)
 橋本トモコは「私はどこから来たのか」という一連のシリーズを発表した。「絵画は実際に見るもの」という自身の言葉通り、思わず吸い込まれそうな色彩と画面に言葉をなくす鑑賞者も多かった。オレンジやぶどうなどわかりやすいモチーフは絵画そのものを追求する硬質なコンセプトをうまく伝えるものになっていた。船橋市民ギャラリーのために制作した本作品は、空間に及ぼす影響も計算され、完成度の高い作品であり、絵画を鑑賞する楽しみを実感させた。
(中略)
 今回の展覧会は表現の主題や技法に注目して共通のテーマを見出すのではなく、「20〜30代の女性アーティスト」という共通項に注目したものだった。同じ女性同士、同じ世代のアーティストが出会い展覧会を開催したことでおたがい刺激を受けたようだ。これはキュレーターとして参加した同世代の私にとっても同様であった。展覧会を終えて、10年後再びまたこのメンバーで集まり展覧会をしてみたらどうだろうか?と思った。さらに個々の表現を突き進めているはずだろう。おたがいの成長を楽しみにしつつ、その時を待ちたいと思う。

 

 
今日の美術を考える会
山本雅美(東京都現代美術館学芸員)
 ふなばし現代美術交流展'05「物語が生まれる所」カタログ
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